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カテゴリー「いじめ自殺」の記事

2014年2月27日 (木)

いじめ自殺 遺族の16年後

Photo_2

 スーパーへ買い物に行く時の古賀和子さん(63)は、近所の高校の下校時間帯は避けるようにしている。それでも道で男子生徒の集団に遭遇したら、急いでUターンする。「息子を死に追いつめた加害少年たちとダブってしまうんです」。こんな生活がもう16年目だ。

 和子さんの長男で、福岡県飯塚市の私立高校2年生だった洵作(しゅんさく)さん(当時16歳)は199812月、同級生6人からの執拗な恐喝を受けた直後に自らの命を絶った。6人とその親は責任を認めず、学校は全校生徒に実施したいじめについてのアンケート原文を、遺族に見せずに焼却した。

遺族は加害少年側と学校側を相手に裁判を起こし、両者に責任を認めさせ、謝罪させる形で和解した。だが加害少年6人の中で、洵作さんに線香を上げに来たのは1人だけ。他の者からは何の音沙汰もない。就職したり結婚したりしたようだと、噂が耳に入ってきただけだ。

事件後、夫の秀樹さん(63)は仕事ができる精神状態ではなくなり、家にこもるようになった。和子さんも体重が激減し、食事が喉を通らず夜も眠れず、薬漬けの日々を送る。副作用で体がだるく、車の運転もできなくなった。「私たちは事件で人生を狂わされました。なぜ被害者だけが、大きなリスクを背負わなければならないのでしょうか」と和子さん。

14216 私はこの事件を発生当初から取材し、遺族の心身が変化していく様を間近で見てきた。「時が解決する」という常套句は当てはまらない。時の経過と共に、成長しているはずの息子の不在を思い知らされ、苦しみは増す一方だ。

文部科学省が昨年末に公表した調査結果によれば、2012年度に全国の小中高校などが把握したいじめは約198千件に上り、過去最多を記録した。なぜ、苦しむ子どもは未だに後を絶たないのか。

「国の対応が小手先だからです」。和子さんは言い切る。いじめ自殺が集中的に報道された06年、文科省はいじめの定義を変更。昨年には「いじめ防止対策推進法」も施行した。だが、現状を把握するために肝心ないじめ自殺者数のデータは、信頼できるものを提供しているとは言い難い。

12年度の文科省の調査では、小中高生のいじめによる自殺者は6人だが、自殺者の総数を196人としており、警察庁による統計の336人とは大きな開きがある。学校側が遺族に配慮し、自殺としないケース等があるためと文科省は説明する。さらに、実態が反映されないとして、2013年度からは自殺件数の集計自体を中止するという。

洵作さんの死は、遺族の知らぬ間に学校が「不慮死」と県教育委員会に報告した。「本当は遺族の意に反して、学校側が自殺を認めたがらないのだろう」と和子さんは感じる。調査すら放棄しようとする国は、ひたすら保身に走っているように見える。

「人はみんないい人なんバイ」。洵作さんの口ぐせだった。自然が大好きで、将来の夢はケニアで獣医になること。高校1年の時に初めて訪れたケニアでは、日本から持ってきた衣類や洗面道具を全部現地の人々にあげてしまい、スーツケースを空にして帰ってきた。体格が良く柔道が得意だったが、暴力は嫌い。「言葉があるじゃん」といつも言っていた。

いじめ自殺事件を取材していると、亡くなった子どもたちの多くが、優しくて繊細な心を持っていたことに気づく。加害者を殴り返すことも責めることもなく、全てを引き受けるのだ。

和子さんは10年前から、近所の小学校で児童たちとチューリップの球根を植えている。球根同士がくっついているこの花のように、お互いに仲良くして欲しいとの願いを込めて。児童からは「自分も友達を思いやりたい」などと感想が届く。いつの時代も子どもの本質は変わらない、と和子さんは思う。子どもを変えるのは大人だ。 

今年は洵作さんの十七回忌。「優しすぎる子が死ななければならない社会はおかしい」。そんな和子さんの訴えに、我々はどう応えられるのだろうか。


(熊本日日新聞『論壇』、2014.2.16寄稿)

*洵作さんは感性豊かな言葉や詩、写真を多く遺しており、個展も開かれた


 

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2013年9月10日 (火)

いじめとジェンダー、メディアの関係(雑誌寄稿)

「あんたは気持ち悪いから、死んでええわ」。
芸人が舞台上で相方に言い放つ。そして、手拍子を取り始めた。
「死―ね、死―ね、死―ね……」。
観客たちも、笑いながら手を打ち鳴らす。「死―ね、死―ね、死―ね……」

あるお笑い公演を見たときの一幕だ。芸人たちのネタは、相手の外見やコンプレックスをあざ笑ったり、見下したりすることでウケを狙う内容が多い。聞き手の優越感をくすぐるので、笑いがとりやすいからだ。この種のお笑いが、日常的にメディアを通して多くの子どもの目に触れ、「いじめ」のヒントを与えている。

体の太さや髪型、背の低さ、髪の毛の薄さなどは本来、身体的「特徴」に過ぎない。その特徴を「欠点」と決め付け、からかいの対象とすることは即ち、「この特徴を持っている人はバカにしてもいいんですよ」というメッセージである。それは子どもの価値観に浸透し、行動パターンを規定する。「あいつの髪型は変わっているから」「あの子の口は臭うから」自分たちより劣っている。だから、いじめてもいいのだと。

中学時代にいじめられたという高校1年生のA子は、こう指摘する。
「いまの笑いって人を叩いたり、自分がその人より上にいたりすることを前提に成り立っている。そういうのを見たら現実の場に持ち込んでしまって、見下せる相手をいじめるんじゃないかな」

女子のいじめの場合、「ジェンダー(社会的・文化的な性のありよう)」が関わるケースも多い。最近の女子はまず「仲良しグループ」を作ったうえで、その内でいじめを行なう傾向がある。メンバーを一人ずつ順番にいじめのターゲットにすることで、結束を強めていくのだ。「いじめるのは嫌だと言ったら仲間はずれに されるから、怖くて言い出せない。いつ自分がターゲットになるかと、毎日ビクビクしている」と、ある女子中学生は打ち明ける。

私たちの社会は女の子に対して、「気配りが出来るように」「みんなと仲良くしなさい」と求めがちである。逆に、意見をはっきり主張する自立心旺盛な子には「女の子なのに気が強い」「男勝り」とマイナス評価を与える。

幼い頃からこうしたジェンダー観を刷り込まれてきた女子たちは、学校内でも「和」を保つことに神経を尖らせ過ぎて、いじめをしてしまう。

もう1つ、女子のいじめとして特徴的なのは、顔立ちが可愛い子や男子にモテる子を、標的にしがちなことだ。そのような子に対して、「調子に乗ってんじゃねぇよ」と陰口を叩いたり、暴行を加えたりする。

「顔は女の命」というジェンダー観は、世間に依然として残る。メディアも美容整形特集を組み、可愛い女の子をもてはやす。外見至上主義ともいえる価値観を、女子は育つ過程で「学習」していくのだ。このため、外見が目立つ子に対して「自分より優れている存在」と嫉妬と脅威を感じ、足を引っ張ろうとする。


メディアやジェンダーが絡むいじめに対処するために、大人に出来ることとは何か。

最も重要なのは「メディア・リテラシー」の育成である。
「メディアの特質、手法、影響を批判的に読み解く」能力と、「メディアを使って表現する」能力の複合だ。
子どもが自分の頭で情報を判断できるようになるには、特に前者が早急に必要である。

子どもにメディア・リテラシーを教えるには、まず大人のあなたが、
メディアが子どもに与える影響を理解しておかねばならない。
冒頭のお笑い公演で、「死ね」コールに率先して手拍子をとり、
相方をブタ呼ばわりするコントに大口を開けて笑っていたのは、なんと大人たちであった。

笑う子どもをたしなめる親もいない。
お笑いに慣れてしまい、その異常さを感知できないのだろう。
子どもはそんな親の姿を見て、「やっぱりバカにしていいことなんだ」と学習する。

子どもと一緒にメディアに接しているときの親の振る舞いは、メディア・リテラシー教育のキーポイントだ。
例えば子どもとテレビを見ていて、他人を見下す言動や暴力表現が出てきたら、
「これは許されない行為だ」とか「こんなことは現実にはあり得ない」などとコメントしよう。
テレビに没頭する子どもを冷静にし、番組を客観視させる。
そこで繰り広げられている内容を「普通のこと」と認識するのを防ぐ効果があるのだ。

また、メディアが女性について「愛想良くあるべき」「出しゃばるのはみっともない」といった論調で描いていたら、
「性別による決めつけはおかしい」「あなたらしさが大事」と説明しよう。

「どうしてメディアでは、女の子の外見が重要視されているの?」と問いかけ、
社会に潜むジェンダーの偏見に気付かせるのもいい。

つまり、メディア・リテラシー教育で重要なのは、大人が子どもに「一歩引いた目線」を提供することだ。
子どもがメディアを真似て軽々しくいじめを行なわないよう、情報を鵜呑みにしない目を育んでいこう。

(教育雑誌『おそい・はやい・ひくい・たかい』寄稿)

【参考文献】

1
大人が知らない ネットいじめの真実


   (渡辺真由子著、ミネルヴァ書房)

 ◆中学道徳教材 採用文献 (3刷)



Photo_2  『性情報リテラシー』 (渡辺真由子著)

 ・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
  自らの性意識・性行動に どう反映させているのか?
 ・「性的有害情報対策」としてのリテラシー教育とは?

  ⇒メッセージ&目次

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2013年1月23日 (水)

いじめ通報の第三者機関を~大津市いじめ自殺報告書を前に

大津市いじめ自殺事件で、
第三者調査委員会の報告書が今月中に出されるという。

注目すべきは、
因果関係にどこまで踏み込むかと、
再発防止策として何を打ち出すかだろう。

いじめ対策については私も何度か言及したが、
今回は、「いじめの悪化を防ぐ」ための観点から、
通報機関設置の必要性を述べたい。

いじめに悩む生徒の通報機関として多いのは、
教育委員会内に設置された窓口である。
だが教育委員会は学校と利害を同じくするので、
公平な調査は期待しにくい。

昨年末発生した大阪市の体罰自殺事件でも、
市教委に通報が行なわれていたが
親身な調査はなされなかった。

そこで求められるのが、
教育委員会から独立した第三者機関である。
いじめ自殺「発生後」の調査には
第三者機関が立ち上げられる動きも見られるようになったが、
是非、いじめが「悪化する前」に通報出来る第三者機関の
常設も求めたい。

この種の機関としては
1999年に全国で初めて、兵庫県川西市が
「子どもの人権オンブズパーソン」を設置。
条例による調査権が与えられており、
実際にいじめが改善したケースもある。

最近では昨年10月に岐阜県可児市が、
独立機関である「いじめ防止専門委員会」を
条例で立ち上げた。

しかし、こうした動きは全国的にはまだ少数である。
いじめの早期解決を公正中立に行なうため、
全ての自治体に、通報・調査用の第三者機関設置へ向けた
条例作りに取り組んでもらいたい。

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2013年1月15日 (火)

「報道する立場から見た、いじめ対応の問題点」講演@徳島

徳島市教育委員会が主催した会合で、講演を務めた。

「報道する立場から見た、いじめ対応の問題点」がテーマ。
いじめ自殺を長年取材してきた経験に基づき、
学校や加害者側の対応のあり方について、
徳島市の保護者や教職員、青少年健全育成に関わる方約250人に
お話させて頂いた(毎日新聞で記事掲載)。

いじめ自殺が発生すれば、学校にマスコミが押し寄せることになる。
だが、学校側が取材を避けるばかりでは何の解決にもならない。
ましてや隠ぺい工作に走れば、ネット炎上にもつながる。
マスコミとどう向き合うか?は、学校の誠意とリスク管理意識が試される課題だ。

加害者とその親についても、
なぜいじめ行為をしてしまったのか、家庭内教育はどうなっていたのか、を明らかにし、
問題点は社会で共有していくことが、再発防止につながると考える。

同様のテーマでは以前、週刊ポストの取材にもお応えした
なお、私が行なってきたいじめ自殺取材については、こちらで詳しく紹介されている。

ちなみに徳島へは少し前にも
文科省の「ケータイモラルキャラバン隊」として訪れ
その際に頂いた「すだち焼酎」の何とも言えないスッパサが印象に残っている。
今回はとんぼ帰りだったが、またゆっくり味わいたいものです。


*子どものいじめには「性」を悪用する
「性的いじめ」も多発しています。
メディアが発信する性情報とも無縁ではありません:

Photo_2  『性情報リテラシー』 渡辺真由子著

 ・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
  自らの性意識・性行動に どう反映させているのか?

 ・「性的有害情報対策」として
  リテラシー教育はどうあるべきか?

  ⇒メッセージ&目次

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2012年12月15日 (土)

「いじめ報道と人権、メディア・リテラシー」by関西テレビ

大阪の関西テレビ『テレビのミカタ』でコメンテーターを務めた。
テーマは「いじめ報道と人権に関わるメディア・リテラシー」。

いじめ問題を14年間にわたり取材してきた立場から、
被害者を取材する際に注意すべき点や
加害者を取材する難しさについて、お話させて頂いた

特に加害者取材については、
少年ということでメディア側も自粛する傾向がある。

だが私としては、
過度に配慮して報道を控えると、
加害者が反省の機会を与えられず
本人のためにならないと考える。

いじめの再発防止へ向けて、問題点を社会で共有するためにも、
加害者と保護者の声を伝えることは必要だ。

ちなみに、関西テレビがこのように
メディア・リテラシーを取り上げる番組を作り始めたのは
「あるある大事典」による不祥事がきっかけ。
いまでは局内に、全国で初めてとされる
「メディアリテラシー推進部」を設けているという。

今回の収録分の放送は
あす16日(日)の午前6時半~7時。

関西エリアでのオンエアですが、
宜しければどうぞ!

なお、「マスコミのいじめ報道が学校を叩く理由」については
以前に『週刊ポスト』でもコメントしている


*子どものいじめには「性」を悪用する
「性的いじめ」も多発しています。
メディアが発信する性情報とも無縁ではありません:

Photo_2  『性情報リテラシー』 渡辺真由子著

 ・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
  自らの性意識・性行動に どう反映させているのか?

 ・「性的有害情報対策」として
  リテラシー教育はどうあるべきか?

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2012年9月 5日 (水)

大津市いじめ対策担当と文科省カウンセラー増員について

4日のテレビ朝日『モーニングバード!』が
前回に続き大津市のいじめ問題を取り上げ、
私もインタビュー出演した。

大津市は今後、
「いじめ対策担当教員」を各学校に1人ずつ置くよう計画しているとのこと。
いじめ対策に集中してあたる人員を確保したいからだろうが、
いじめは校内のあちこちで発生し、対処の手順も煩雑であるもの。

果たして、たった1人の教員にそれを任せては
負荷をかけ過ぎることにならないだろうか。
本来、学校の教員全員が「いじめ対策担当」の意識を持つべきだが、
せめて複数(ベテランと若手の組み合わせなど)の担当者を置いてもらいたいところである。

1人の対策教員にどの程度の権限を持たせるのか、
いじめ対応の専門知識を学ぶ機会を与えられるのか、も問われよう。

一方、文科省はいじめ問題に対応するため、
全国の小中高校や教育委員会に配置するスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを、
計1000人規模で増員する方針を決めたという。

いじめの背景には、子どもの心理的な問題や加害者の家庭環境が関わっており、
臨床心理や社会福祉の専門家による対応を充実させることは望ましい。

ただ、学校ぐるみでいじめを隠ぺいしようとする動きがあれば
カウンセラーの行動も制約される恐れがある。
カウンセラーが直接自治体などに、いじめを告発できるホットラインも必要ではないか。

また子どもは、学校内でカウンセラーに相談する姿を他者に見られたくないもの。
メールや電話による相談にも対応することが求められよう。


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2012年8月15日 (水)

子どもたちへ3.いじめている人へ

*いじめの傍観者被害者、加害者へ向けたメッセージの完結編。
  出典は拙著 『大人が知らない ネットいじめの真実』

--------------------

>1.友人を守るために >2.いじめられている人へ

3.いじめている人へ

誰かをいじめているあなた。「いじめはいけません」と学校で散々習っただろうから、自分がやっていることは悪いことだと、頭ではわかっているはずだ。それでもいじめてしまうのは、なぜなのだろうか。

 「あいつはウザいから」「キモいから」、いじめてもいいんだと思うかもしれない。だがそれは、あなたの主観による勝手な判断だ。その人の親は、その人のことをウザいなんて思っていない。赤ん坊の頃から大切に育ててきた、「愛しい」存在だ。

その人は、あなたにウザいと思われるためにそういう言動をとっているわけではない。「ウザい」と思い込むことで、あなたは自分のいじめ行為を正当化したいのだろう。だが、どんな外見や性格も、その人の個性に過ぎない。だから、いじめる理由にはならないのだ。そもそも人間には誰にも、他人をいじめる権利がない。

例えば誰かの性格のある部分を、あなたは「嫌だ」と思うとする。もしその性格が、将来犯罪行為につながりかねないような問題のあるものだったら、先生や親が指導するだろう。あなたがでしゃばる必要はない。もし、その性格のせいでその人とはどうしても仲良くできないというのなら、口頭で柔らかく注意してみよう。でも、性格を変えるかどうかは、あくまでその人が決めることだ。あなたの思い通りにその人が変わってくれなかったからといって、仲間外れにしたりネットに悪口を書き込んだりしてはいけない。「注意」と「制裁」は別ものだ。制裁は「いじめ」であり、あなたにそんなことをする権利はない。

人間は一人一人違って当たり前。自分とは違うその人を認め、その人にもあなたを認めてもらおう。

いじめ行為は、あなたにどんな感情をもたらすだろうか。

人が苦しむのを見ると面白い? 気分がスカッとする? 

そんなふうに思うのであれば、あなたの心は、何らかの不満を抱えている。あなたは、いじめをすることによって相手よりも自分が上だと優越感に浸ったり、ストレスを発散したりしている。裏返せば、それだけ自分に自信がなく、ストレスを溜めているということだ。

そのストレスの原因は何だろう。自分の心に問いかけてみて欲しい。 などの身近な大人に愛されている実感はあるだろうか。「いい子」でいることに疲れていないか。誰かに嫌な目に遭わされていないか。

 そう、いじめをしてしまうあなたも、実は被害者なのである。ストレスに押しつぶされそうになっている現在の環境から抜け出す方法を、ここで考えよう。

 まず、あなたがいくら辛くても、他人をいじめていいわけはない。そのいじめ行為が一時的なものであったとしても、相手の心に一生にわたる傷を残す可能性がある。いじめを受けている人は勉強が手につかなくなり、成績が落ちる。食欲がわかない、眠れない、うつ状態になる、といった症状に苦しむ。ひどいときは不登校になったり、転校をしたりせざるを得なくなる。最悪の場合は命を絶つかもしれない。

 あなたがいじめを止めても、その人は簡単には回復しない。一時期受けたいじめのせいで対人恐怖や人間不信に陥り、就職してもうまく人間関係を築けず、引きこもりになってしまうこともある。あなたが軽い冗談のつもりでやったいじめが、その人の人生を狂わせるかもしれないのだ。あなたに責任がとれるのだろうか。

さらに最近は、過去にいじめられた経験を持つ少年が、無差別殺人などに手を染めるケースも発生している。いじめられた恨みは、それほど深いのだ。

あなたの辛さは、あなた自身と、その原因を作った人、身近な大人とで解決していく必要がある。全く関係ない他人を巻き込んで、ムシャクシャする気持ちのはけ口にしてはならない。

そして、周りに信頼できる大人がいるか見渡してみよう。あなたは親とうまくいっておらず、「親は自分のことをわかってくれない」と悩んでいるかもしれない。そんなときは、思い切って親にその思いをぶつけてみる。口に出して言ってみる。親だって、あなたが何を考えているのかよくわからなくて、上手に接することが出来ずにいるのかもしれないのだ。それでも改善されないのなら、先生や身近な大人に相談してみよう。大人たちの話し合いで解決する問題もあるし、状況次第では、専門機関の手も借りるかもしれない。

親以外の人から嫌な目に遭ったときは、出来るだけ親に伝えよう。遠慮することはない。親はいつだって、あなたに何でも打ち明けてほしいと思っている。

親に言う心の準備がまだ整っていないのであれば、前項「いじめられている人へ」で紹介したように、電話相談やネットで気持ちを吐き出してみるといい。誰にも言えない悩みでも、例えばブログなどに書くことで、心の中が整理される。相談に乗ってくれる人も現れるかもしれない。

 いじめ行為の重さに気づいたら、もう自分を責めるのは止そう。誰かを傷付けたい、という心があなたに育ったのは、あなたに辛い思いをさせた大人の責任だ。いじめっ子というレッテルを貼られた者を大人はただ叱り付けるだけで、その悩みに気づこうとしない。だからこそ、声を上げよう。いじめをしてしまう自分の心の奥にある淋しさや苦しさを、誰かに伝えよう。

新たに誰かをいじめる前に、あなたは、救済されねばならない。

>1.友人を守るために >2.いじめられている人へ

1

出典:
 渡辺真由子 著

 
『大人が知らない ネットいじめの真実』

 

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2012年8月 6日 (月)

子どもたちへ2.いじめられている人へ

*出典は拙著 『大人が知らない ネットいじめの真実』
既に読まれた教員の方からは、「道徳の授業で使いたい」等の御連絡を頂いている。
新たに引用されたい方も、ご一報下されば幸いである。
--------------------

>1.友人を守るために <3.いじめている人へ

 

2.いじめられている人へ

いじめを受けているあなたは、苦しい日々を過ごしていることだろう。自分の性格や外見がこうだからいじめられるのだと、自分を責めているかもしれない。

 だが、あなたは全く悪くない。いじめが起きる責任は、いじめられる側にではなく、いじめる側にある。あなたがどんなことをしたとしても、あなたの家庭環境がどうであっても、いじめられていい理由にはならない。あなたは人間として、健康的な生活を営み、差別をされない「権利」を持っている。その権利を侵そうとする、いじめっ子の方が悪いのだ。

 いじめる人は、あなたを困らせて楽しんでいるだろう。ストレスを発散しているだろう。なぜ彼女ら彼らは、そのようなことをするのだろうか。

いじめる人の心は、病んでいるのだ。家庭で親とうまくいっていなかったり、別の人からいじめられていたり、無理やり勉強をさせられていたりして。いじめる人は本当は自分に自信がないので、誰かを見下すことで優越感を得たいと望んでいる。だから、いじめをするのだ。自分の不満を吐き出すために誰かを犠牲にせずにはいられない、可哀想な人たちだ。

そうは言ってもあなたとしては、加害者のストレスのはけ口にされるなんて、たまったものではない。出来れば、「これはいじめだ」と気づいた段階で、先生と親に報告しよう。あなたは悪くないのだから、堂々としていればいい。ネットいじめにしろ、実生活でのいじめにしろ同じだ。自分がいじめに遭っているのを知られることは、恥ずかしいだろうか。いじめを受けることを恥ずかしく思う必要はない。相手の辛さを思いやれずにいじめをすることこそが、人間として未熟で、恥ずかしいことなのだ。先生や親に告げれば「チクッたな」と報復されるのが心配だろうか。報復されたら、それをまた信頼できる大人に知らせればいい。大人には知恵があるから、何とかしてくれるはずだ。

特に、親など最も近くにいる大人は  、いつでも子どもの力になりたいと思っている。あなたは身近な大人に心配をかけたくなくて黙っているのかもしれないが、その人はあなたに作り笑いをされるよりも、悩みを打ち明けてもらう方がずっと嬉しい。守ってやりたいから。

どうしてもまだ先生や親には言いたくないというときは、電話相談を利用してみよう。名前を言う必要はなく、秘密厳守であなたの話を聞いてくれる。また、こんなときこそ匿名で使えるインターネットが役に立つ。いじめられている人のための相談掲示板が色々ある。あなたと同じような体験をした人から、アドバイスがもらえるかもしれない。そうやって、自分の悩みを言葉にして外に出して、誰かと共有しよう。一人で抱え込んでしまうと、心と体がそのうち悲鳴を上げる。

いじめを受けていると、学校生活は針のむしろに座っているようなものだろう。これを逃れる方法は二つある。一つは、ひたすら耐えること。冗談じゃない、と思うかもしれないが、日本人の平均寿命は約八十年。いじめに苦しむのは、長い人生の中のわずかな期間だ。加害者はいずれ、あなたをいじめるのに飽きる。そうでなくとも、学校を卒業すればおさらばすることが出来る。いじめられる立場になったことで、あなたは「心の痛み」を知った。自分がどのような言動をとれば、相手をどんな風に傷付けてしまうのか、想像できるようになっただろう。辛い思いをした者は、そのぶん他人に優しくできる。このいじめは、あなたがより心の豊かな人間に成長するためのトレーニングなのだ。トレーニングに耐え抜いた経験は、これからあなたが先の長い人生で多くの人に出会い、仕事をし、家庭をつくるなかで必ず役に立つ。だからいまは息を潜めて、嵐が過ぎ去るのを待とう。

だが、いじめの内容がちょっとやそっとの我慢でやり過ごせるものではなく、とにかく加害者にはもう会いたくないと、あなたは思っているかもしれない。度を過ぎたいじめの被害は、あなたの心身に長期的な影響を及ぼし、今後の人生をも狂わせてしまう。この場合は、速やかに避難した方がいい。つまり、学校へ行くのを止めるのだ。

学校を安全な場所にするのは先生たちの責任で、加害者にいじめを止めさせるのはその親の責任だ。いじめる人の心の病が治るまで、あなたは学校へ行く必要はない。勉強は自宅での通信教育や家庭教師、不登校者向けのフリースクールなど、様々な形で出来る。親は心配するだろうが、学校へ行っていじめられ続ける方が、よほど勉強に集中できない。

そして、いじめられた悔しさを勉強にぶつけよう 。自分に自信をつけるためと、地元から脱出するためだ。日本の社会は何だかんだ言っても、成績が良い者に有利な仕組みになっている。レベルが高い学校へ進んで、いじめた人を見返すのだ。遠方の学校を選べば、加害者から逃れることも出来る。進学が経済的に苦しい場合でも、成績が良ければ奨学金が出る。

注意しておくが、「死にたい」と思うぐらい辛くても、自ら命を絶つのは避けること。そんなことをしたら加害者の思うツボだ。いじめる人は、相手をコントロールすることに快感を味わう。自分の影響力がどれだけ強いかを、確かめたがっている。もし相手が自分のいじめのために死んでくれたら、それこそ最高の影響ではないか。

「加害者の名前を遺書に書いて自殺したら、懲らしめてやれるかもしれない。反省してくれるかもしれない」

と、あなたは淡い期待を抱くだろうか。だが、いじめ自殺事件の多くで、加害者に反省の態度は見られない。森啓祐さんが自殺したとき、加害少年たちは「あいつ死んで、せいせいした」と口にし、笑いながら棺の中を覗き込んだ。さらに啓祐さんの自殺後も、他の生徒にいじめを繰り返したという。古賀洵作さんをいじめ自殺に追い込んだ加害少年たちのほとんどは、事件直後に遺族へ謝罪することはなく、線香一本上げにも来なかった。少年院を半年で出た後は、夜の街をバイクで暴走していた。いじめ自殺事件の裁判は全国で起きているが、加害者側の大半はいじめの事実を否定し、謝罪を拒み、遺族側と争う。

 あなたが自ら命を絶てば、いじめる人を喜ばせるだけだ。代わりに、家族や親戚、友人など、あなたの大切な人たちを一生悲しませることになる。その選択は、得策ではない。

>1.友人を守るために <3.いじめている人へ

1

出典:
 渡辺真由子 著

 
『大人が知らない ネットいじめの真実』

 

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2012年7月26日 (木)

子どもたちへ1.友人を守るために

大津のいじめ自殺がマスコミに取り上げられて以来、他地域でもいじめ問題が相次ぎ明るみに出ている。折しも夏休み、子どもたちは「いじめ」について、改めて考えを巡らせていることだろう。

今回から、いじめの「傍観者」「被害者」「加害者」へ向け、3回にわたりメッセージを掲載する。思索を深める一助になればと願う。

*出典は拙著『大人が知らない ネットいじめの真実』
既に読まれた教員の方からは、「道徳の授業で使いたい」等の御連絡を頂いている。
新たに引用されたい方も、ご一報下されば幸いである。
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 <2.いじめられている人へ <3.いじめている人へ

子どもたちへ1.友人を守るために

 あなたの大切な友人がいじめられたら、どうすればいいのだろうか。その人の悲しみを思うと、辛いことだろう。あなたにも出来ることはある。

 最初は、その人がいじめられているのかどうかは、よくわからないかもしれない。あなたの目には、ただの悪ふざけに映るかもしれない。だが、やられている方は顔が笑っていても、心で嫌がっているときがある。友人がふさぎ込んだり、口数が少なくなったり、いつもと様子が違ったりしたら、「どうした」と声をかけてみよう。その人は最初、「何でもない」と言うかもしれない。いじめられているのを知られるのは、恥ずかしいのだろう。ちっとも、恥ずかしいことではないのだが。二人きりになってじっくり話を聞いてみよう。そのうちきっと、悩みを打ち明ける。本当はあなたに、気づいて欲しかったのだ。

 いじめを受けている人の心は、弱っている。悪口を言われて、自信を失くしていることだろう。でも、いじめの標的になるのは、その人が悪いからではない。どんな性格や外見であろうと、いじめられても仕方がない理由にはならない。加害者は、自分の方が他人より上に立ちたくて、一生懸命いじめる口実を作る。理由は何でもいいし、相手は誰でもいいのだ。

 だから、「私はあなたのことを何も悪く思っていない」と友人に伝えよう。「大丈夫、私がいるから」と、弱った心を支えてあげよう。

その人とは、いつも一緒にいるようにする。学校の休み時間や下校のとき。その人は、いついじめられるかとビクビクしている。一人にさせないようにして、加害者に、いじめる隙を与えないのだ。ネットの掲示板上やメールで誹謗中傷を受けているのなら、その内容を見せてもらおう。もしその子が嫌でなければ。一緒に受け止めてあげることで、辛さは半分になる。

その人といると、あなたもいじめられるだろうか。本当は加害者に「止めろ」と言いたいのに、先生に報告したいのに、自分もやられるのが怖くて出来ないかもしれない。だが、一人の加害者によるいじめ行為を、他のクラスメートみんなが見て見ぬふりをしたらどうだろう。周りで笑ったり、はやし立てたりしたらどうだろう。被害者にとっては、クラス中の全員にいじめられているのと同じだ。いじめという「ショー」において、傍観者は観客である。主人公の加害者は、観客の視線と拍手を背中に感じ、ますます張り切っていじめる。被害者は、いじめられる姿を観客の目にさらされることで、より深い苦痛と惨めさを味わう。

 

あなたが一人で加害者に立ち向かうのは、確かに簡単ではない。ならば、他の傍観者たちと一丸となってはどうか。「みんなでやれば怖くない」である。周りの人に、味方になってくれるよう頼もう。ただし、あなたが一人でいきなり傍観者集団に声をかけても、鼻先であしらわれるのが関の山だろう。多数派に安住していたいのが人間の心理だからだ。ポイントは、傍観者と「一人ずつ」話をしていくことである。傍観者も実はそれぞれ、後ろめたさを抱えている。あなたの友人がいじめを本当に嫌がっていること、皆で守ってあげたいことを伝えれば、きっとわかってくれるはずだ。名付けて、「個別懐柔作戦」。


ノルウェーでは、学校の教室全体で、いじめを許さない雰囲気作りに取り組んでいる。いじめ研究の第一人者が開発した「いじめ防止プログラム」に基づくものだ。生徒たちは次の四つのルールを習う。

・「私たちは、いじめをしない」
 ・「私たちは、いじめられている人を助ける」
 ・「私たちは、取り残された人を仲間に入れる」
 ・「もし誰かがいじめられているのを知ったら、私たちは先生と親に言う」

 学校は定期的に各教室でいじめに関する授業を行ない、生徒たちはいじめに対する自分の意見や、なぜいじめてはいけないのか、どうすれば減らすことが出来るかを話し合う。教師は、いじめに対応するための専門的な研修を受ける。保護者も学校単位と教室単位のミーティングに参加し、いじめの被害者と加害者が抱える問題や、学校がどう取り組もうとしているかを学ぶ。

 このプログラムは、ノルウェー政府の予算で国中の小中学校に導入されただけでなく、アメリカやイギリス、ドイツでも利用されている。生徒たちは教室内のいじめ行為に厳しい目を向け、被害者をかばうようになり、いじめは三〇%から七〇%減少したという

 いじめは多くの場合、先生の目の届かないところで起きる。いじめの芽を最も早くつめる立場にいるのは、あなたたち生徒だ。ノルウェーのように、教室全体でいじめに取り組むことを先生に提案してみてはどうだろう。それに子どもは、大人よりも子どもの言うことを聞くのだから。

 一方ネット上のいじめであれば、表向きは匿名として書き込むことが出来るので、あなたもかばいやすいだろう。身近な友人はもちろん、掲示板やSNSで知り合った面識のない「友だち」も、ネットいじめに遭うことがあるかもしれない。プロフのゲストブックに悪口を書き込まれたり、掲示板に実名を出されたり。そんなときあなたが出来るのは、決して同調したり、煽ったりする書き込みをしないということだ。「私も○○はウザいと思う」とか、「○○の写真貼ってよ」などと閲覧者(=傍観者)たちがけしかけると、いじめる人は調子に乗って誹謗中傷をエスカレートさせる。

 逆に、「止めろ」と書き込んでみよう。一人だけで止めようとしてもあまり効果はないので、ハンドルネームを使い分け、あたかも多数の人がいじめに反対しているように見せかける。ある学校裏サイトでは、特定の生徒が悪口の攻撃を受けていたが、他の生徒たちが加害者に向けて「こそこそ悪口言うのは止めなよ」「セコい奴」などと何度も書き込んだことで、おさまった。子どもたちの間で、自浄作用が働いたのである。また、被害者にメールなどで直接連絡をとり、相談にのるのもいい。あなたの一言が、いじめられ心細くなっている友人を、勇気付けるのだ。


<2.いじめられている人へ <3.いじめている人へ

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出典:
 渡辺真由子 著

 
『大人が知らない ネットいじめの真実』

 

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2012年7月17日 (火)

いじめを減らすには~被害者イメージの改革&加害者ケア 【大津市いじめ自殺】

大津市いじめ自殺を特集した12日のテレビ朝日「モーニングバード」は
通常よりかなり高視聴率で、私の解説部分が最高視聴率を記録したとのこと。
皆がこの問題の行方を注視しているのだろう。

今回のケースでは
学校や教育委員会の不手際にばかり目がいきがちだ。
だが、「いじめをどうすれば減らせるか」の議論も
同時に行わなければ、この種の問題はまた起きる。

いじめ減少へ向けて、
14年間いじめ自殺事件の取材を続けている経験から
私が提案するのは次の3点。
1.学校・教員に対する評価の仕組みの変更
2.いじめ被害者に対する大人の意識改革
3.加害者ケア

1について、
学校側がいじめの隠ぺい工作に走るのは、
いじめを発生させたことに対し
「指導力不足」などの減点評価が下されるのを恐れるからである。
だが、いじめはどの学校でも起こり得るもので、
この評価は全く現実的でない。
いじめの発生件数にとらわれるのでなく、
「いじめにどう対応したか」を評価のポイントにすべきだ。
文科省が音頭をとって、仕組みの変更に取り組んでもらいたい。

2について、
いじめ被害者が周囲に相談しないのは
「いじめられっ子」に対するネガティブなイメージのためである。
「いじめられる=弱い、情けない、惨め」といったイメージが、
文科省の過去のいじめ定義や、年配の国会議員、
メディアに登場する年配男性コメンテーター等によって流布されてきた。

子どもにもプライドがある。
自分が「恥ずかしい奴」になり下がったことを、
どうして親や友人や教師に知られたいと思うだろうか。

大津市の件では
教員がいじめを認識しなかった理由として、
被害生徒が「大丈夫です」とか「いじめられていません」と答えたことを
挙げているようだ。
だがこれは、被害生徒が必死で自らの尊厳を保とうとしたのだと
私には感じられる。
自分が「いじめられっ子」であることは認めたくないし、
周りからもそんな目で見て欲しくない。

「いじめを受けることは弱くも恥ずかしくもない。
いじめる者こそが、攻撃欲求を抑えられない弱くて恥ずかしい人間なのだ」
という認識をまず親や教師が持ち、子どもに徹底して伝える必要がある。

では、いじめる者への対策をどうしたらいいのか?が
3の「加害者ケア」である。

いじめる子どもこそ、実は深刻な問題を抱えている可能性がある。
ある調査では、「家庭内での親子コミュニケーション」と「いじめ加害経験」に
関連性があることが明らかになった。
学校ではいじめ加害をする者が、別の場では被害者になっていたり、
何らかの理由で「自己肯定感」が育まれていないことも考えられる。

さらに「心の教育」も必要だ。
過去のいじめ自殺の事例でも、いじめた側は自分の行為を「冗談だった」と語った。
自分がされたらどうなるかという想像力が、子どもの心に育っていないという現実に
親や教師は向き合わねばならない。

いじめ加害者を生みださない対策として、
国内では「自分の感情をコントロールする」教育を実践したり
海外では「差別の理不尽さ」を体験させる教育を実践したりする
ケースがある。

こうした「加害者対策」を、
もっと広く取り入れていくことが、
いじめを減らす上で極めて重要だ。
加害者がいなければ、
いじめは存在しないのだから。

拙著『大人が知らない ネットいじめの真実』でより詳細に述べている。

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