子どもの性被害と児童ポルノ問題
神戸市で行方不明だった小学1年の女児の遺体が見つかった事件は、
本日、発見現場近くに住む47歳の男が逮捕される急展開となった。
犯行動機はまだ明らかになっていないが、
被害者の腰部分が見つかっていないこともあり、
性的な目的による犯行の可能性も否定できない。
警察白書(平成25年版)によれば、
13歳未満の子どもを狙う強姦や強制わいせつの認知件数は
近年増加傾向にある。
また、神戸事件における関連性は現時点で不明だが、
子どもへの性犯罪では、加害者が性的メディアに影響を受けたと
供述するケースも多い。
今回は御参考までに、
子どもへの性犯罪と児童ポルノの問題に関して私が寄稿した
論考を掲載しよう:
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『秋葉原をめぐって』
性被害問題に取り組む有志による秋葉原視察ツアーに参加した。幼児や小中学生の着エロDVDを売る店や、ビルのほぼ全フロアをアダルト系作品で埋め尽くす店などが目に飛び込んでくる。
なかでも印象的だったのは、漫画販売の某チェーン店である。地下一階に設けられた成人向け漫画誌コーナーに、成人男性が小学生女児と性交する内容の作品が多数陳列されている。女児も性行為や性交を望んでいる、あるいは最初嫌がっても次第に喜び出す、といったストーリーだ。
こうした漫画を、数十人の成人男性が黙々と立ち読みしている。年齢層は20代から50代くらいか。仲間と連れだって来ている会社員風の男性たちもいる。
東京都青少年健全育成条例は、強姦等の描写がある漫画やアニメ等の創作物を青少年に有害としてゾーニングの対象にしたが、成人が読む分には(わいせつ物に相当しない限り)何の縛りもかけない。店内の男性客が堂々とこれらの漫画を読むのは、当然といえば当然だ。
とはいえ、青少年にとって有害な創作物が、成人にとっては有害でないと本当に言い切れるだろうか。子どもに対する性犯罪の加害者の大半は成人である。しかも犯行動機の1つに「性的な漫画やアニメに刺激された」と挙げた成人加害者は、2004年に発生した奈良小1女児誘拐殺害事件を始め、近年では熊本女児殺害事件や広島女児かばん監禁事件など、枚挙にいとまがない。架空の出来事や人物を描いた創作物であっても、見る者に影響を与え、間接的に実在の被害者を生みだす可能性は、成人に対しても否定できないと言えよう。
もちろん、性犯罪の加害者が犯行の理由としてメディアを挙げるのは、自分の責任を外的要因に転嫁するためとも推察される。また、メディアからこうした影響を受けるのは、「一部の特殊な人々」と一般に受け止められている。だが、性的創作物が与える影響に関して筆者が国内外の研究を概観したところ(被験者は中高生から成人まで様々ではあるが)、注目すべき知見が明らかになった。その詳細は『情報通信学会誌』2012年103号に発表している。
これらの社会科学的知見が示すのは、因果関係ではなく相関関係であり、性的創作物を見た全ての人が攻撃的になるわけではない。しかし、子どもへの性犯罪発生状況と併せ見ると、児童ポルノ禁止法の改正など成人に対する性表現規制の制定を検討するにあたっては、創作物であることを理由に一律に規制対象から外すことは現実的でないと思われる。子どもを性的対象として描くことを禁じる表現面の規制や、購入時に身分証明書を求める入手面の規制など、一定の制限が受容される余地はあろう。
(『売買春問題ととりくむ会』、2014年3月寄稿)
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