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2014年9月

2014年9月24日 (水)

子どもの性被害と児童ポルノ問題

神戸市で行方不明だった小学1年の女児の遺体が見つかった事件は、
本日、発見現場近くに住む47歳の男が逮捕される急展開となった。

犯行動機はまだ明らかになっていないが、
被害者の腰部分が見つかっていないこともあり、
性的な目的による犯行の可能性も否定できない。

警察白書(平成25年版)によれば、
13歳未満の子どもを狙う強姦や強制わいせつの認知件数は
近年増加傾向にある。

また、神戸事件における関連性は現時点で不明だが、
子どもへの性犯罪では、加害者が性的メディアに影響を受けたと
供述するケースも多い。

今回は御参考までに、
子どもへの性犯罪と児童ポルノの問題に関して私が寄稿した
論考を掲載しよう:

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『秋葉原をめぐって』

 性被害問題に取り組む有志による秋葉原視察ツアーに参加した。幼児や小中学生の着エロDVDを売る店や、ビルのほぼ全フロアをアダルト系作品で埋め尽くす店などが目に飛び込んでくる。

なかでも印象的だったのは、漫画販売の某チェーン店である。地下一階に設けられた成人向け漫画誌コーナーに、成人男性が小学生女児と性交する内容の作品が多数陳列されている。女児も性行為や性交を望んでいる、あるいは最初嫌がっても次第に喜び出す、といったストーリーだ。

こうした漫画を、数十人の成人男性が黙々と立ち読みしている。年齢層は20代から50代くらいか。仲間と連れだって来ている会社員風の男性たちもいる。

東京都青少年健全育成条例は、強姦等の描写がある漫画やアニメ等の創作物を青少年に有害としてゾーニングの対象にしたが、成人が読む分には(わいせつ物に相当しない限り)何の縛りもかけない。店内の男性客が堂々とこれらの漫画を読むのは、当然といえば当然だ。

とはいえ、青少年にとって有害な創作物が、成人にとっては有害でないと本当に言い切れるだろうか。子どもに対する性犯罪の加害者の大半は成人である。しかも犯行動機の1つに「性的な漫画やアニメに刺激された」と挙げた成人加害者は、2004年に発生した奈良小1女児誘拐殺害事件を始め、近年では熊本女児殺害事件や広島女児かばん監禁事件など、枚挙にいとまがない。架空の出来事や人物を描いた創作物であっても、見る者に影響を与え、間接的に実在の被害者を生みだす可能性は、成人に対しても否定できないと言えよう。

 もちろん、性犯罪の加害者が犯行の理由としてメディアを挙げるのは、自分の責任を外的要因に転嫁するためとも推察される。また、メディアからこうした影響を受けるのは、「一部の特殊な人々」と一般に受け止められている。だが、性的創作物が与える影響に関して筆者が国内外の研究を概観したところ(被験者は中高生から成人まで様々ではあるが)、注目すべき知見が明らかになった。その詳細は『情報通信学会誌』2012103号に発表している。

これらの社会科学的知見が示すのは、因果関係ではなく相関関係であり、性的創作物を見た全ての人が攻撃的になるわけではない。しかし、子どもへの性犯罪発生状況と併せ見ると、児童ポルノ禁止法の改正など成人に対する性表現規制の制定を検討するにあたっては、創作物であることを理由に一律に規制対象から外すことは現実的でないと思われる。子どもを性的対象として描くことを禁じる表現面の規制や、購入時に身分証明書を求める入手面の規制など、一定の制限が受容される余地はあろう。

(『売買春問題ととりくむ会』、2014年3月寄稿)


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2014年9月19日 (金)

書評『ある日、私は友達をクビになった』(新聞寄稿)

『ある日、私は友達をクビになった――スマホ世代のいじめ事情』
(エミリー・バゼロン著、早川書房)について、
新聞用に書評を執筆した。

米国の中高生3人が遭遇した事例を軸に、
SNSを使いこなす子どもたちに生じている新たないじめの実態を、本書はあばいていく。
著者自身も10代のころにいじめを受けたジャーナリストだ。

特筆すべきは、米国のティーン2千万人が参加する巨大SNS、フェイスブック(FB)本社への取材。許可を得るのに6カ月かかったという。同社にはFB上でのいじめの訴えが大量に寄せられるというが、意外に貧弱な対処態勢が明らかになる。

子どもや親、学校へ向けたネットいじめ対策の具体的なアドバイスもあり、
LINEなどでのいじめが深刻化するわが国にも大いに参考になる内容だ。

なお、本書に関する私のより詳細な書評は
共同通信経由で全国各地の新聞社に配信される予定。
どの新聞に掲載されるかはわかりませぬ。
よろしければ
御購読する新聞の書評欄に目を光らせて下さいませ。

ちなみに私もかつて30歳で北米に留学した時、
年齢を10歳サバ読みして現地の若者たちと交流していた。
彼ら彼女らがSNSに夢中になる様を目の当たりにし、
私も一緒に利用して、その便利さと面倒くささを体感したものである。

本書を読むと
当時と比べて子どものSNSトラブルは深刻化しているが、
一方で対処する知恵も湧きあがってきていることに
一抹の希望を感じるのであった。

Photo_2 <追伸>

その後、共同通信から
「お陰さまで、沢山の加盟紙が
掲載しています」
と連絡が。

全国の新聞約30紙に掲載された模様。

掲載紙がドドンと届きました!

 


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2014年9月12日 (金)

緒方貞子氏と国連(と私)

 緒方貞子―難民支援の現場から (東野真著、集英社新書)を読んだ。

国連難民高等弁務官を務めた緒方氏は、私が密かに憧れてきた女性である。

といってもこの本を読んでからは、ぼんやりとした憧れが
はっきりとした「尊敬」に変わった。

緒方氏はデスクに座って指示を飛ばすだけにとどまらず、
自ら紛争の現場へ出かけ、積極的に視察をして回っていた。
その現場は、いつ銃弾が飛んできてもおかしくはない
非常に危険な地域なのである。
人道援助に対する確固とした信念がなければ、こんなことは出来ない。

本書は、様々な大惨事に対処する時々に
緒方氏がどのように悩み、どう決断を下したかを
本人へのインタビューを中心にまとめている。
国際的な人道支援のトップに立つ人間に求められる覚悟が
生々しく伝わってくる。

実は私も、
メディア表現における女性や青少年の人権について
オーストラリア、カナダ、米国で学びを重ねてきた者として、
いずれは国連でこの問題を議論してみたいと考えている。

日本と海外はお互いの文化の「イイトコ取り」をし、
「尊厳が重んじられる社会」の構築へ向けて高め合っていけばいい、
というのが私の信条だ。

メディア表現をめぐる人権感覚については
他国の方が先進的である場合もある。
そうした感覚をいかに日本に取り込めるか、
日本独自の問題点とは何か、といった点を国際社会で論じ、
この国のメディア政策に反映させていきたい。

その一助として、
「メディアの性表現に関する国際法と人権」をテーマに、
近く論文を公表する予定だ。

また、
性暴力表現の影響に関する科学的データについては、
こちらの論文にまとめている

Photo 来年は、
米国で開催されるメディア・リテラシーの研究大会で
拙著『性情報リテラシー』に基づき、
日本メディアが発信する性情報の問題点や
リテラシー教育のあり方について
報告する予定である。

緒方貞子氏のように……と言うにはまだまだだが、
せめてその信念の強さにならい、
一歩一歩進んでいきたいとの思いを新たにしたのでした。


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2014年9月 4日 (木)

「SNSいじめ、デートDV、リベンジポルノ」保護者向け講演@千代田区

東京都千代田区男女共同参画センターが主催した講座にて
講師を務めた。

「子どもとネットトラブル~親が学ぶインターネットとの付き合い方~」
がテーマ。
主に、小中学生の保護者向けである。

今回の講座は、なんと2週連続という豪華(?)版。
1週目は、
ネットいじめやデートDV、性的有害情報、リベンジポルノ問題について
現状や問題点を私が講演。

2週目は、
前回の話を受けて、
参加した保護者の方々にワークショップをして頂いた。

「気になるネット・トラブルについて我が子と話し合おう」という宿題を
事前にお出ししておいたので、
その上でトラブルの回避方法や、家庭でのルール作りを皆で考える。

このワークショップが
なかなか盛り上がりました!

日頃、保護者同士でこういう話をじっくりする機会は
あまり無いとのことで、
皆さま話が尽きない模様。

・「親子のコミュニケーションの重要さを感じた」
・「現実の話として、理解できた」
・「自分の中でうやむやになっていた部分がハッキリしたので
子どもと向き合ってみようと思った」
・「とても漠然としていたネットの問題点などがはっきりした」
・「子どもたちの置かれている状況が大きく変わり、とても危うい状況にあることがよくわかった。ネット情報の影響を改めて感じた。こわいけれど、しっかりとリテラシーを身につけたいと思った」

……などなど、沢山の御感想が。
関係者の方々、有難うございました。

そうそう、
「この講座の宿題のおかげで、ネットトラブルについて子どもと話すきっかけが作れた」
という嬉しい声も。

性的有害情報やリベンジポルノの問題なんかは特に、
機会がなければ子どもに言い出しにくいですよね。

どんどん私の講演のせいにして頂いて結構であります!


【参考文献】

1大人が知らない ネットいじめの真実

Book

プロフ中毒ケータイ天国
 子どもの秘密がなくなる日




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