SNSに個人情報を出すとは、第三者による接近を容易にさせるということだ。例えばプロフィール欄で「居住地」は曖昧に記入しても、「職業」の欄に「○○駅前のマックでバイトしてます」と書けば、居場所が特定されてしまう。第三者がSNSの顔写真で好みの女の子を見つけ、本人に会おうと思えば簡単に会えるのだ。学校名が書かれていれば、校門前で待ち伏せすればいい。
「学校向かってる。○○線ゲキ込み」など、SNSで自分が利用する電車の路線名や時間帯を明らかにしたり、よく行く店の名前を書いたりする子どもも多い。その子の生活パターンや行動範囲が、不特定多数の人々に把握されてしまう。
また、携帯やスマホの位置情報を示すGPS機能をオンにしていれば、それらで撮影した画像にも位置情報が埋め込まれる。自分の部屋の画像をSNSに投稿すれば、自宅住所が知られる恐れもある。
SNSで個人情報を出したがために、性的な被害に遭う事例は多発している。出会い系サイトではないからと油断は出来ない。警察庁の統計によれば、SNSなどのコミュニティサイトを利用して児童買春や強姦などの被害に遭った児童は2013年上半期に598人で、前年同期に比べ89人も増えた。
個人情報を悪用した嫌がらせの形も様々だ。例えば「なりすまし」。攻撃したい相手のSNSから名前や顔写真、携帯電話番号やメールアドレスなどを勝手にコピーし、本人になりすました別のSNSを作り上げるのだ。なりすましは、主にネットいじめの一環として行われる。被害者になりすましたSNSで「私とエッチしたい人募集中」などと書き込み、被害者のもとに卑わいなメールや電話が集中するよう仕向ける。加害者は、被害者が困っているのを見て楽しむのだ。
自分がSNSに公開した個人情報が、出会い系サイトに転載されてしまうこともある。
中学3年のリエ(仮名・15歳)の携帯に、ある日、非通知で電話がかかってきた。取って見ると、男の人の声。「パンツ何色?」「きょうは何着てるのかな?」。そんな電話ばかり、一日に50件ほどもかかってきた。
どうやら、リエがSNSに載せていた電話番号が、いつの間にか出会い系サイトに登録されていたのだ。しかも3つものサイトに。
一体、誰がそんなことをするのか。「犯人は大体特定できます」とリエは言う。「元彼とかですね。別れて一週間後ぐらいにバンバン変なメールくるから、『あ、登録したな』と」
フラれた腹いせにやるのか。世間では女子の方が感情的と考えられがちだが、男子の執着心の深さも相当なものである。最近では、別れた彼女の裸画像をネットにさらす「リベンジポルノ」と呼ばれる現象も発生している。
友達による犯行のこともある。中学2年のユカ(仮名・14再)が仲良しグループの1人とケンカした後、SNSに卑わいな書き込みが押し寄せた。その友人が、ユカになりすまして出会い系のチャットをやり、「私のSNSにメッセージちょうだいね」と勝手にURLを公開したのだ。
「この前もSNSに、『一緒にチャットした○○だよ』ってメッセージが来ました。『誰ですか』って返信したら、『ユカちゃん覚えてないの?オレだよオレ』って。『すいません、SNSが悪用されたんだと思います』って返事しても、『え~、でも……』とか、すごく言われるんです。怖かった」
SNSに秘密を載せる子どもたちは、一昔前には考えられなかったトラブルに巻き込まれている。
<続く:不定期連載>
初出:月刊『子どもの文化』2014年5月号
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