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2014年3月24日 (月)

身近に潜む性の人身取引~ある日本人女子高生の場合(新聞寄稿)

Photo  西日本に住むカナさん(仮名)は高校1年生だった2002年から約1年半、売春組織で強制的に働かされた。父は公務員、母は専業主婦の家庭に育ち、進学校に在籍して放課後は塾へ通う暮らしが、ある日を境に一変した。

その年の夏、繁華街の飲食店でアルバイトをしていたカナさんが帰ろうと裏口を出ると、50代ぐらいの男が「ちょっと来て」と手招きする。お客さんかな、とついていった事務所で、突然男に殴りつけられ、性的に暴行された。

男はカナさんのかばんから生徒証や保険証、携帯電話を取り出した。学校や家族、友人の名前、親の職業を確認し、「これをバラしたら皆がどうなるか分かるよね」とカナさんを見据えた。「で、仕事の話なんだけどさあ」

毎週末、バイト帰りに組織の人間に待ち伏せされ、売春先へ連れて行かれた。客は、10代の少女が好みという30代から60代ぐらいの男たちだった。様々なプレイを要求され、薬物を注入されたり天井から吊るされたりするなど「ヒト以下の扱いを受けた」

 家族には打ち明けられなかった。カナさんは小さい頃から、行儀の良さや聞きわけの良さで親に評価されていると感じてきた。「いい子でいる期待に沿わなくちゃ、と。親に言っても受け止めきれないだろうと思った」。警察へ駆け込もうにも、親に連絡されるかもしれず、あきらめた。

 平日は16歳の女子高生として普通に学校へ行き、勉強したり友達と遊んだりする。売春の時だけ、完全に心のスイッチをオフにした。「切り替えないと、どんどん日常が浸食されてしまう。このまま身を持ち崩すんじゃないかと思うと気が狂いそうだった」

 終わりはあっけなく訪れた。2年生の2月、受験勉強に本腰を入れたいと考え、「もう客の相手はあまりできなくなる」と思い切って組織側に告げた。意外にも「それじゃ仕方ないな」とあっさりした答え。組織内には、同じように売春をさせられている女子高生たちが何人か囲われていた。「私の代わりはいくらでもいるんだ」と感じた。

 売春からは解放されたが、客との性行為の様子を組織側が撮影し、児童ポルノのDVDとしてインターネット上で密売していた。販売中止とデータ削除を求めると、代償に700万円を要求された。大学1年生になっていたカナさんは、複数の性風俗店をかけ持ちして懸命に働いた。1年あまりで金を用意し、ついにデータを削除させた。

 「これを私のゴールにしよう」。最初の被害から4年が過ぎていた。

 今月8日の「国際女性の日」、人身取引の問題を考える会合が東京都内で開かれた。人身取引とは、何らかの強制的な手段で人の自由を奪って働かせ、利益を得る行為で「現代の奴隷制」とも言われる。カナさんのケースも性的搾取に該当し、決して特異ではない。

この問題への取り組みの遅れを国際社会から批判され、日本政府がようやく刑法に人身売買罪を新設したのは05年のことだ。だが、「法の定義が狭く、包括的な対策は不十分」と、世界の人身売買の実態をまとめた米国務省の報告書(13年)で指摘されている。

 会合を主催したのは、人身取引被害者の救済を専門にするNPO法人「人身取引被害者サポートセンターライトハウス」。相談窓口を設置し、弁護士の紹介や病院への付き添いも行なう。同法人が昨年受けた相談は297件だが、全国の警察が摘発した人身取引事件は25件で、被害者は17人。「摘発は氷山の一角にすぎない。誰でも被害者になり得る」と同法人は訴える。

カナさんはいま、28歳。被害後、突然心臓の鼓動が早まり、目もかすむなどのパニック発作を頻発して電車に乗れなくなり、自傷行為も繰り返した。病院のカウンセリングに通い、全てを認めてくれる伴侶も得て、ようやく少し落ち着いたところだ。今後は同様の被害を受けた人とともに、当事者によるケアグループを立ち上げたいと考えている。

「あの頃は自分の状況が何かもわからなかった」とカナさん。被害の自覚がなければ助けも求められない。身近に潜む人身取引という犯罪を、まずは社会が広く認識する必要がある。


(熊本日日新聞『論壇』最終回、2014年3月16日寄稿)

*関連:性ビジネスの闇に堕ちた少女(新聞連載)

【参考文献】

Photo_2
『性情報リテラシー』

 渡辺真由子著(Kindle版)

 望まない妊娠、中絶、デートDV……
  青少年の 「性的有害情報対策」としての
  メディア・リテラシー教育はどうあるべきか?

関連の動き色々

 

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