性教育にメディア・リテラシーを!(新聞寄稿)
明けましておめでとうございます。
今年もご一緒に、「尊厳を重んじ合う社会」の構築に
取り組んで参りましょう!
私の今年の目標は、性教育の学習指導要領に
「性情報リテラシー」を盛り込むこと。
青少年と性情報をめぐる現状をルポした先日の記事には非常に多くのアクセスを頂き、
予想を上回る反響に驚いている。
続いて今回は「対策編」をお届け。
性教育にメディア・リテラシーを導入するとは、どういうことなのか?
御参考になれば幸いである。
なお、当ブログで紹介しているエピソードはごく一部。
より赤裸々な若者の本音は、最新刊『性情報リテラシー』でご確認頂きたい。
メディアの性情報の歴史と内容分析や、男性向けメディアと女性向けメディアによる性的メッセージの違いなども検証している。
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【性教育にメディア・リテラシーを!】
「いま振り返ると、メディアの性情報には少なからず影響を受けたかなと思いますね」。私の性とメディアに関する調査を機に、自分の性意識や性行動がメディアと結び付いていることを初めて自覚した、という大学生が多かった。子ども時代に戻れるなら、どんな性情報に接したいかを聞いてみた。
「18歳以下にも、ポルノ情報を出していいと思う」とA男(21)。中学1年からAV(アダルトビデオ)を見始めた。女優が玩具を使った愛撫を喜んでいたので、実際に交際相手にやってみたら嫌がられた経験がある。「子どもでも、現実にはAVを見ていることがあるわけじゃないですか。だから、ちゃんとしたエッチのやり方を教えるビデオもあった方がいい。ソフトなテクニックや避妊のハウツーとか。自分はいきなり過激なAVを見たから、それが理想みたいになってしまった」
メディアの性情報が現実のニーズに即していないと感じるのは、女子も同じだ。「男性誌の特集は『女を落とす方法』という内容ばかり。もっと『相手を思いやるように』とか、精神面を重視してほしい」とA子(21)。「恋人が出来ない男子はコミュニケーション下手。コミュニケーション格差を埋める情報を発信する方が先」とも。
B子(18)は、女性向けのメディアに偏りを感じる。「ドラマや漫画は、性行為を男性が主導するパターンが多いんです。何度も見ていると、それが普通なのかなと思って、自分も現実の場面で受け身になっちゃう」
一般メディアも性をタブー視せず、正しい性知識を提供すべきだと訴える。「新聞やテレビ、雑誌で、性行為に伴うリスクをもっと発信してほしい。性病や望まない妊娠とか、中絶について、常にそういうものと隣り合わせであることを知るべきだ」とB男(21)。高校時代、女友達が15歳で妊娠してしまったのを目の当たりにした。「安全日、危険日の情報やピルについて、メディアでもっと教えてほしい。モーニング・アフター・ピル(緊急避妊ピル)の入手方法も」
一般メディアは不特定多数の目に触れる機会が多く、親が子どもと一緒に接することも可能な媒体だ。影響力の大きさを生かし、性教育に必要な情報を積極的に発信していくことが期待されよう。
メディアの性情報をうのみにしないリテラシー教育も求められる。子どもたちが実際に接しているアダルト雑誌や漫画・ネットを、授業の教材として活用してみてはどうか。「女性が家に来るのはOKサイン」「女性のノーはイエス」といった情報には誤解があることを教えねばならない。「妊娠したら堕ろせばいい」と考えていたC男(20)は、中絶が女性の心身に与える負担を伝えると「知らなかった」と絶句していた。「膣外射精は避妊ではない」との点も強調する必要がある。
「ポルノを見ていても、誰がどうやってその情報を供給しているかなんて考えたことない」と言うのはD男(19)。「性的メディアは『売れる』ために、過激な表現や都合のいい情報を盛り込んでいる」などの「作り手の意図」を知らせ、情報を客観的に受け止められる目を養いたい。
家庭でも、E男(21)は「現実はAVとは違うのだからね」と母親から言われ、AVが演技だと初めて認識したという。息子の部屋に成人雑誌を発見して動揺した別の母親は、「こういう本と違って、生身の女性は性欲解消の道具じゃないよ。コミュニケーションが大事なんだよ、と思いきって息子に話しました」と語る。日頃から親子間で「女性と男性の性的考え方の違い」を話題にしたり、下ネタをジョークにしたりと、「性」をオープンに語れる雰囲気作りが重要だ。
「青少年の性とメディア」をめぐる取材結果は、拙著『性情報リテラシー』にまとめた。現状に照らせば、性教育にメディア・リテラシーを導入することは急務といえよう。「お互いの性を尊重しあうコミュニケーション」を育むため、子どもの性の問題に、正面から向き合ってみてほしい。
(熊本日日新聞『論壇』寄稿、2013.12.15)
【参考文献】
最新刊!性教育とメディア・リテラシー
『性情報リテラシー』
・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?
・「性的有害情報対策」としての
リテラシー教育はどうあるべきか?
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