『性情報リテラシー』6.身近にあるデートDV
(新聞連載)
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「料理をご馳走してあげるよ」。ミサキ(19)は留学先のアメリカで知人の日本人男性に誘われ、部屋へ行った。彼は10歳年上で、新しい土地に不慣れなミサキの相談にのってくれる兄のような存在。食事の後、一緒に映画を見ていたら、徐々に部屋のライトが落とされた。彼の体がすぐそばに来ていた。
「私は初めてだったんです。相手が何を求めているのか、自分に何が起こっているのか、全くわかりませんでした」
男性は避妊具を着けていなかった。それからすぐ、ミサキは彼を避けるように日本へと戻った。帰国後、生理が少し遅れた。
「もう自分は日本にいて1人だから、とても心配になりました。結局妊娠はしていなかったけれど、親にも友達にも、こんなこと言えない」
大学1年生のカナ(18)は、「映画のDVDを見よう」と言われて同級生の男子の家へ遊びに行った。一緒に横になりながら映画を見ていると、背後にいた彼の手が徐々に体に触れてきた。冗談かと思っていたら、本気だった。
「彼は『大丈夫だから』とだけ言って、ことを進めていきました。少し抵抗したけれど聞き入れてもらえず、仕方なく許しました。でも、全然幸せではありませんでした」
顔見知りの相手による合意のない性交渉は、「デートDV(ドメスティック・バイオレンス)」の1つである。今回の取材で、女子学生たちの口からデートDVの被害体験が次々と出てきたことに、衝撃を覚えた。
2人きりにならなければ安心、とは限らない。アユミ(関連情報)はあるとき、男友達Aの家へ遊びに行った。その場には男女の友達合わせて6、7人がいた。皆で飲んだ後、床の上で雑魚寝をすることに。うとうとしかけた頃、体に重みを感じて目が覚めた。Aがのしかかって来ていた。
一瞬ふざけているのかと思い、『やだやだやだ』と言ってアユミはAを蹴った。
「他の友達にバレたら面倒くさいから、大きな声は出せなくて。それでも彼が止めなかったんです。だからぶん殴って、『帰るわ』と言ってタクシーで帰りました」
Aからは翌日、「自分は何をしたか覚えてない」とメールが来たが、無視した。あれ以来、連絡は取っていない。
「彼のことを友達と思っていたし、他にも人がいたから警戒しないで行ったのに。ショックでした」
デートDVの多くは、家の中で発生している。密室であるだけに、深刻な事態に発展する場合もある。なぜ、家へ行く女子が狙われるのか。メディアが発信する性情報はどう関わっているのか。次回は男子の視点を紹介する。
<続く
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