『性情報リテラシー』1.性情報の氾濫のなかで
(新聞連載)
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「日本人の性生活満足度は15%で、世界最下位」。
英デュレックス社が2007年、世界26ヵ国の18歳以上を対象に実施した調査結果である。私の周りの大学生に聞くと、確かに性生活への悩みを抱えた者は多い。特に目立つのは、女子は「彼氏がメディアの性情報を真似する」、男子は「彼女の反応がメディアと違う」といった、メディアに起因する戸惑いだ。
コンビ二の本棚や電車の中吊り、ビデオにネット……。性情報の氾濫ぶりは世界的にも突出するこの国で、性をめぐるコミュニケーションが貧弱化しているのはなぜなのか。本連載では、若者の「性」とメディアの性情報との関係を探る。
そもそも、いまの若者は子ども時代、どのような性的メディア体験を積み上げて来たのだろうか。
21歳のマサユキ(仮名)。色白で髪や目の色素も薄く、中性的な雰囲気を持つ。
この就職難にも関わらず、商社やIT系など4社から内定を得、どこへ進むか迷い中だという。
最近、大学内で彼女が出来たが、それまでは1人の女性とじっくり付き合ったことがない。
千葉の進学校から現役で難関私立大学に入り、文学部4年に在籍するマサユキは、自分の性的メディア遍歴を
「知識先行型」だと語る。
初めてアダルトビデオ(AV)を見たのは、小学5年生の時だ。友人が近所の公園で拾ってきた。
「小5でもAVへの興味は思いっきりありますね。モザイク
が多かったから、あまり衝撃は覚えませんでした。
裸自体はグラビアとかで散々見ていたし。AVは小学校の教室で回されていましたよ、女子の間でも」
日本性教育協会の調べ(2005)
によると、中学生男子の約2割にはAV視聴経験がある。この数値は、高校生になると約6割に跳ね上がる。入手経路は道端での拾得が多い。所有者が無造作に捨てることで、子どもの目に触れやすくなっている。「兄の会員証を使いレンタルした」「古本屋で中古ビデオを買った」とのケースもある。
18歳未満へのAV販売等は規制されているが、半ば有名無実化しているのが現状だ。
さらに、現在20歳前後の若者は思春期に入る頃、インターネットや携帯電話の登場によるIT革命に遭遇した。
これが、彼らの性的メディア環境を大きく変える。なにしろ未成年でも性情報は見放題、しかも無料である。
マサユキは中学生になると、アダルトサイトにはまった。
最初は親の目を盗んでパソコンを使い、その後は携帯で。日毎に過激な動画を好むようになった。
「ネットだと、無修正の裏モノにもアクセスしやすいじゃないですか。一回見てしまうと、さらにそれを求めるようになる。モザイクがかかっていると物足りなくなるんです」
子どもの頃から手軽に性情報を手に入れられた世代。
蓄積された情報が彼らの性行動にどう反映されるのか、検証していく。
<続く
『性情報リテラシー』が本になりました!
・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?
・「性的有害情報対策」としての
リテラシー教育はどうあるべきか?
⇒メッセージ&目次
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