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2012年4月14日 (土)

『わたし流番組論』 中編

わたし流番組論
『常識や習慣から解き放たれてみたい
~「新しい価値観」「新しい場所」を求めて』

                                                (月刊民放 2001年9月号)

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前編 ▼後編

〈「女性記者」だから……?〉

「しょうがないでしょう、起きたものは!」
「しょうがないんですか?」
 私立高校の校長室。校長と私は向かい合っていた。
洵作さんと、恐喝した6人の少年は全員、その学校の2年生に在籍していた。
学校側がいじめを把握していなかったのかどうかを聞きたくて、
私たちは何度も取材を申し込んだ。しかし電話さえ取り次いでもらえない。
6人もの逮捕者を出しておきながら口を閉ざす、
教育現場の隠ぺい体質を目の当たりにした。

仕方なく直接校長にインタビューを申し込みに行ったところ、
激しいやりとりが始まってしまった。
生徒のいじめ自殺事件についてどう思うのかとの私の質問に校長が返したのが、
先の一言だった。 

 校長が本音を漏らしたことで、このやりとりの場面は図らずも
番組のヤマ場の一つとなった。
テープでこの場面を聞き返すと、今でも私はあの時の緊迫感を生々しく思い出す。


 二人のやりとりについて、ベテランの制作者やコンクールの審査員が
述べた感想は、ある部分が共通していた。
「記者が若い女性だったから、相手は油断して口をすべらせたのだろう」
というのだ。意外だった。

 おそらく彼らの指摘は正しいのだろう。
若い女のコと見て、なめてかかった校長。
ザマーミロ!と思う反面、私は複雑な気持ちである。
 自分は年齢や性別への意識などなく、一人の記者として
相対しただけだったからだ。若いこと、さらに女性であることが
世間から未熟の代名詞のように見られているという事実には
(実際私もまだ限りなく未熟なのだが)、少々がっかりさせられた。

とはいえこの職業、女性であることのデメリットよりは
メリットの方が多いと思う。
企業や自治体で報道機関に対応するのは基本的に課長以上。
となると、圧倒的に男性の比率が高いからだ。
男性記者が取材相手のもとに3回通わないと聞けない情報を、
女性記者は1回で取ってきたりする。

不公平だと感じている男性記者もいるだろう。
報道記者の場合、特に警察での情報争奪戦が激しい。
警察署の幹部が女性記者と親しげに話していると、
男性記者の間から「いいよなあ、女性は」と囁きあう声が聞こえてくる。
「オンナを売り物にして」との侮蔑的な響きをその裏に込め、
「男たるもの実力で勝負だ!」と虚勢を張ったりする。

 仕方がないのだ。男性記者は「オトコ」を売り物に出来ないのだから。
警察署の幹部に女性の姿は見かけないのだから。

「組織の意思決定の場にもっと女性を」と訴えるのは大抵女性団体だが、
むしろルックスに自信のある男性たちが、そんな訴えを起こしたら面白いと思う。

〈受け手の半分は女性なのに作り手は男性〉

社会進出する女性が増え、「オンナが強くなった」と言われても、
管理職に占める女性の割合は諸外国に比べて格段に少ない。
ひとたび結婚や出産をすれば、子育てと家事の負担を夫以上に請け負い、
良き主婦として家を守ることが求められる。
 最近話題の夫婦間暴力も幼児虐待も、結局は日本に根付いてきた
性別による役割分担意識のひずみが表出したものに他ならない。
そしてこの様な私たちの社会が形作られてきた背景には、
メディアの影響も決して小さくはないだろう。

テレビや新聞で使われる女性と男性に絡んだ表現からは、
社会がそれぞれの性に期待する役割が感じ取れる。
例えば、女性が描いた絵を指して
「女性らしく繊細でしなやかな筆づかい・・・」などと説明する。
一方で、男性が涙を流す姿に「男泣き」とコメントをつける
(これは、『男性は人前で泣くべきではない』との前提をもとにした表現。
『女泣き』という言葉はない)。
かくいう私も、街頭でご夫婦にインタビューする時など、つい
「そちらの『奥様』は・・・」と口走ってしまい、
「しまった!」と思うことがある。

CMでも、子供のお弁当作りに便利な高性能電子レンジに嬉々とするのは母親、
夫にビールを運ぶのは妻、など、
シチュエーションが思いっきり固定化されている。
若い女の子のお色気姿をアイキャッチャ―に使うCMはあっても、
若い男の子のセクシーさに思わず目が釘付け、
というようなCMはほとんど見かけない。なぜか。

答えは簡単、メディアの受け手の半分は女性でも、
作り手の大半は男性が占めるからだ。
彼らの価値観に照らした「常識」もしくは「楽しめる」といった判断のもとで
情報は発信される。
その弊害を問題視する動きも市民団体などから出てきてはいるが、
まずはメディアに携わる私達自身が自覚することが必要だろう。

取材で大学教授など、社会の一線で活躍する女性に会うと、
「知ってる?テレビ局の現場で働く女性はたったの2割なのよ」と、
その少なさを指摘されることがよくある。
おそらく男社会の中で幾つもの壁を経験してきた彼女たちにとって、
世間の意識形成に大きな力を持つメディアの世界に
自分と同じ性があまり見当たらなかったのは、なんとも心許なかったに違いない。

「あなた、頑張ってね」とハッパをかけられると、
一地方のヒヨッコ記者の自分に何が出来るのか、思いを巡らせてしまう。

  

前編 ▼後編
 



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